
はじめに
アウトドアシーン(登山、キャンプ等を想定)において、変わりゆく天候への対応は不可欠です。特に「雨」への対応は身近で、重要なものです。
雨具として一番ポピュラーなモノは「傘」だと思います。ですが、アウトドアシーンでは「レインウェア」の方が使いやすいはずです。
この記事はアウトドアにおける「レインウェア」の必要性と使い方を調べてみました。
※この記事での「レインウェア」は、下記画像のような、上下セパレートタイプのものです。
レインウェアの必要性

雨が降れば、レインウェアが必要になります。
なぜ、レインウェアが必要なのでしょうか?当然、雨で濡れないためです。
では、なぜ濡れない方がいいのでしょうか?一番の理由としては、
濡れると「体温が奪われるから」です。
体温が奪われることで起こる症状(個人差があります)
- 36.5~35℃ 寒気、骨格筋のふるえ(シバリング)がはじまる。
- 35~34℃ 運動失調(歩行時によろつく等)。
- 34~32℃ シバリング減少、歩行不能。
- 32~30℃ シバリング消失、身体硬直。
- 30℃以下 意識低下が進む。
というような症状が現れ、症状が進むと・・・
最悪、低体温症で死ぬこともあります。
他にも、抵抗力が下がり、風邪等、体調を崩しやすくなったり、単純に不快だったり、基本的にいいことはありません。
暑い日は(多少ならば)気持ちいい時もありますけどね(笑)。
街中ならば屋内等、雨から逃げ込める場所も多いでしょう。また、体を濡らしても、危険な状態になる前に、体を乾かしたり温めたりすることも比較的に容易なはずです。
ですが、自然の中ではそうはいかないでしょう。雨を避ける場所も、体を休める場所も、あるとは限りません。そうなると、上記のようなリスクが一気に高まります。
それらを避けるには、そもそも体を濡らさないことが重要になってきます。そのために、雨具の「レインウェア」が必要となってきます。
傘ではダメ?

アウトドアシーンにおいて、レインウェアの方がいい理由は、いくつかあります。
1.両手が空(あ)く・・・何かと作業があるので、手は空いていた方が便利です。また、転倒時でも有利です。
2.無駄にスペースを取らない・・・例えば木々の合間等で傘を広げると、ぶつかったりひっかかったりで危険です。仲間の邪魔になることも。
3.(比較的に)風に煽られない・・・場所によっては、危険な場合もあります。崖や川のそば等は特に危険になります。
4.全方向からの雨に対応できる・・・特に登山の場合、足元から雨が吹き上がることもあります。こういった場合、傘だと対応できません。
このような理由から、傘よりレインウェアの方が有利です。
ちなみに、ポンチョタイプ↓は中間位のイメージですね。
但し、場合によっては、傘の方がいい時もあります。
そもそも、レインウェアは「蒸れる(※)」「着用が面倒」というデメリットがあるので、傘が不利にならない、下記のような利用シーンでは、傘の方が良いです。
※アウトドアメーカーのものならば「透湿性」があるのでそれ程蒸れないです。詳しくは後述。
- 風が強すぎないで、十分なスペースがあり、安全な場所で、傘を開いても邪魔にならない場合。
- キャンプ場や山小屋で、夜中にトイレに行くなど、近距離、安全な移動の場合。
傘も持っていくと使い分けられますが、個人的には、あくまで荷物に余裕がある場合ですね。
レインウェアの機能
アウトドア用のレインウェアには
- 「撥水」・・・水を弾く機能
- 「防水」・・・水を通さない機能
- 「透湿」・・・水蒸気を通す機能
という機能があります。
水は通さず、水蒸気を通すという、矛盾するような機能を合わせ持っています。

この機能によって、雨を通さず、且つ、汗などの水蒸気を放出するので、蒸れも抑えます。
この水蒸気を放出する機能が無いと、せっかく雨を防いでも、汗などで「ウェア内がびしょ濡れ」なんてことになりますので、とても重要な機能です。
そして、こんな高性能なウェアなので、当然お値段もお高い(笑)。上下セットで買うと 2万円~5万円位?もっとお高いのもありますね。
防水透湿性素材は「Gore-Tex」という、最高峰のものもありますが、各アウトドアメーカーでも似たような性能の素材を開発していますね。
数字で見る防水透湿性能
耐水圧(防水性)
「mm」の単位で表します(※)。生地にしみこもうとする水の力を抑える性能の数値です。
※mmH2Oや、Kpa(キロパスカル)の表示もあります。商品カタログ等ではmmが一般的です。
レインウェアの生地が、どれくらいの水圧に対して耐えられる防水性を持っているかを表します。
例えば、耐水圧20,000mmであれば、生地の上に1cm四方の柱を立て、柱の中に水を入れて20,000mm(20m)までの高さに入れた水の水圧に耐えられるということになります。(JIS規格)
小雨程度を防ぐなら、5,000mm、普通の雨、雪にさらされるのであれば、最低10,000mm以上、登山などは命にかかわるので最低でも20,000mm以上が必要と言われているそうです。
透湿性
「g/㎡/24h」の単位で表します。生地1㎡あたり、24時間で何gの水分を透過した(外に出す)かを示した数値です。
衣服内の水滴にならない蒸気状態の汗を、生地が透過させる(外に出す)度合いを表します。例えば、透湿度20,000g/㎡/24hであれば、1日(24h)で1平方メートルあたり、20,000g(20kg)の水蒸気の汗を透過する(外に出す)能力があるということになります。
蒸れを防ぐには、最低でも5,000g/㎡/24h以上、できれば8,000g/㎡/24h以上とされています。
レインウェアの選び方
数字から
数字上、耐水圧20,000mm、透湿性8,000g/㎡/24hを目安に選べば、登山等の激しい運動が伴うアクティビティにも対応できるはずです。
但し、性能は使い続けることで劣化します(メンテナンスで劣化をある程度抑えることもできます)。また、当然、予算を上げてこれらの数字が上がれば、より快適になります。その点はお財布と相談です(笑)。
その他
使いやすさという意味では、ポケットが多い方が当然使いやすいかと思いますが、ポケットが多い分、重くなります。登山等、重さにシビアな条件が付く場合は、慎重に選びたいです。
また、裁縫個所の防水処理がしっかりしているか?等も見所になると思います。

ご自身の利用シーンを踏まえ、店員さんと相談しながら選ぶと、より良いものを選べると思いますので、参考までに。サイズもあるので、衣類はなるべく店で試着しながら選びたいですね。
着用時の注意点
せっかくの高機能ウェアを着ても「ちゃんと」着ないと結局濡れてしまいます。特に気を付けたい個所は袖口と裾ですね。
袖口

大抵、袖口にはマジックテープで絞れる、ベルクロが付いています。これをしっかりと絞めましょう!
手袋もある場合、手袋は袖の中へ。
腕時計が見れなくなるのが難点(笑)。私は、腕時計は外してポケットに入れてしまいます。

手袋を外に出すと、ウェアを伝って手袋の中に水が入ってしまいます。手袋が防水の場合、中に入った水がどんどん溜まってしまうので、逆効果になります。
裾

「裾」は靴の外に。外に出すことで、雨水はウェアを伝って外に落ちます。

中に入れてしまうと、ウェアを伝って靴の中に水が入ってしまいます。靴が防水の場合、中に入った水がどんどん溜まってしまうので、逆効果になります。
もし、スパッツ(ゲーター)↓等がある場合、これもレインウェアの中の方がいいでしょう。レインウェアの脱ぎ履きの時にいちいちスパッツに干渉しなくて済みます。
その他、補足

ズボンの脇には写真のようにファスナーが付いていて、ハイカットの靴も脱ぎ履きしやすくなっています。ものによっては靴を脱がずにウェアの着脱ができるものもあります。
また、ポケットの中は完全防水では無い事が多いので、気を付けましょう!
濡れて困るものは、レインウェアのポケットではなく、中に着ている服のポケットや、防水のバック類の中へ。
上記以外だと、フードのフィット感の調節や、胴回りを絞れる機能が付いているものも多いので、良く把握して使いましょう!せっかくの機能が勿体ないので!
他の活用方法
レインウェアは水を通しませんので「風」も通しません。ウインドブレーカーとしても使えますし、ちょっとした防寒着としても使えます。
緊急時には簡易バケツのような使い方も出来るでしょう。
万一、屋外で雨風を凌がなければならなくなった場合「水、風を通さない布」というのはかなり心強いはずです。「体を自然の驚異から守る最小のシェルター」というのは言い過ぎかもしれませんが、一つで何役もこなせる、高機能ウェアです。
例え晴天の天気予報でも、アウトドアでのアクティビティを楽しむ際には、一着持っていくのがオススメです。
まとめ
記事掲載時、もうすぐ梅雨入りの時期だったのでこんな記事を書いてみました。
御存じの方も多い事なのかと思いますが、少なくとも私はキャンプや登山を始める前は知らない事だらけの内容でした。色々調べたり聞いたりして覚えたことですが、同じように、もしお役に立つ方がいるのならば幸いです。ではまたーー。
おまけ
オートバイ乗用時のレインウェアも、耐水圧20,000mm、透湿性8,000g/㎡/24hを越えていれば、それ程問題無いと思います。着用方法も、先述の袖、裾を気を付ければO.K.ですね。
ただし、手袋は、よほど良いものでないと、防水透湿性のものだと限界があります。レバーを握るので、その握力分、圧がかかるためです。
透湿性があるということは、結局穴が開いている訳ですから。私の経験上だと、「蒸れ」はある程度覚悟して、ビニール製のオーバーグローブを着用するのがオススメです。
